こんにちは!マサユキです。
今回は不動産賃貸業をしている私が非常に安い価格で仕入れた戸建の(ちょっと悲しい)話をします。
持ち家を活用したいと考えてこのサイトをご覧になっている方にとって、反面教師と考えてもらえればと思います。
この記事を書いた理由
最初にお断りしておきますが、私は不動産賃貸業を営むものとして、当然収益性を確保しなければなりません。そのため物件は少しでも安く仕入れる事を考えています。
「持ち家を高く売りたい」という人からすると私のような人間はうっとうしいと思う存在かもしれませんが、実際には不動産賃貸業者はみんな当然のように同じような事を考えています。
私は不動産業界の中に身を置く者としてそちら側から「高く売るにはどうしたら良いか」という事を考えてこのサイトを書いています。
今回も読者のみなさんがこの記事を読んで「なるほど、こういうケースもあるんだな。気を付けよう」ぐらいに考えるきっかけになれば・・・という思いで書いています。ご了承くださいね。
懇意にしている業者から驚きのオファー
さて本編です。ある日懇意にしている不動産仲介業者さんと食事をしている席で、このような事を言われました。
「マサユキさん、安い戸建があるんですけど、興味あります?」
私はマンションとかアパートといったいわゆる「1棟もの」を購入して運営しています。戸建はいわば1戸しかない物件ですから、家賃が1世帯からしか入らず、たとえ利回りが良くても量が稼げないので、あまり興味がありませんでした。
この業者もその事を知っているので、「まあ興味があれば…」ぐらいの感覚で私に聞いてきたわけです。
でもせっかくオファーしてくれたのだから、「安いって幾らぐらいですか?」と軽く打診してみると返ってきた回答にびっくり仰天しました。
その金額はなんと20万円!です。
「買います!」と即答して、「当然現金買いなので、決定ですよ」と念を押しました。
どんな戸建てか知りませんが、20万円ならたとえ全損しても、悲しいですけど、事業的にはなんてことはありませんから。
詳しく聞くと築46年の木造という非常に古い戸建で、接道なしすなわち再建築不可の物件という条件は確かにかなり悪いものでした。
但し入居者がいて現在賃貸中でした。私は事業として賃貸をしますから、この状態はとてもありがたい状態です。
まったく問題ない条件なので、すぐに購入の意思を示して契約の段取りを取ってもらいました。
ちなみに① 再建築不可物件とは
建物は道路に接しているすなわち接道している必要があります。建築基準法の条件を満たす道路に接道していないと再建築不可となり、いったんその建物を壊して更地にしてしまうと新築を建てることができません(下図のB~が再建築不可)。
新築するためには、4m以上(場所により6m)の道幅の道路に2m以上接している必要があるんですね。
これは火災などが発生した時に消防車が入ってきて消火活動が出来るようにしておくためです。
なお幅が4m未満の道路(2項道路といいます)でもセットバックを設ける事で、再建築が可能になる事もありますが、今回の物件は接道がまったくないので、再建築するためには隣接する接道している土地を買い取る(もしくは借りる)必要があります。いわゆる地上げですね。
再建築不可の物件は当然人気がなく、そのような土地は業界ではクズ地などと呼ばれて敬遠されます。銀行の評価も非常に低くなってしまいます。
ちなみに② 安い戸建は基本紹介されない
現実としてこのように極めて安価な戸建ては存在しますが、不動産仲介業者はまずこのような物件を紹介しません。
なぜなら彼らの取り分である仲介手数料は物件価格に比例して決まるため、今回のケースでいうと、仲介手数料は5%+消費税となりますので、10800円という事になります。
それでも重要事項説書や契約書を作成しなければなりませんし、現金決済なので比較的簡単とはいえ、所有権の移転には司法書士(この手数料などは別途かかります)を手配するなど、高額な物件もこのような安い物件も手間は同じようにかかる訳で、割に合わない訳です。
今回は懇意にしているという事でこの情報を私にくれた訳ですが、私もその辺はわかっているので、今回の仲介手数料(名目は別にしています)は3万円をお出ししました。
ちなみに③ どう活用する?
今回は入居者がいました。このような物件の取引をオーナーチェンジと言いますが、ここまで安く物件を仕入れる時は通常空き家になっているケースがほとんどです。
しかも残置物が山積みになり、雨漏れがあり、と問題山積で放置されていることもざらです。
(写真はあくまでイメージです、私が買った戸建てはこれよりかなりマシです)
もしそのような物件であるならば、100~200万円ぐらいをかけて内部をある程度きれいにリフォームして貸し出すつもりでした。
200万円かけても物件価格と合わせて220万円です。家賃3万円(地方都市でしたが、駅から徒歩15分程度ですし、この程度の家賃設定ならかなり安いので入居者はまず見つかります)で貸せば年間36万円であり、利回りは16%ですから、まずまずという事になります。
こうやって古くてぼろい戸建を再生して賃貸として活用する事を主として取り組んでいる「再生系大家さん」などと呼ばれている賃貸業者もいます。
契約
この話のあと3週間後に売り主さんのご自宅で契約となりました。
20万円なので現金引き渡してその場で決済できそうに思われるかもしれませんが、実際には司法書士も同席して、所有権の移転の段取りを始める必要があるので、それがキチンと出来る見込みであることを確認する為、契約と引き渡しは別日になりました。
やはりこれで仲介手数料1万円では仲介業者さんはやってられないですね。
売主は70歳ぐらいのご高齢の女性でした。お話を伺っていると、どうやらこの戸建は彼女の親からの相続物件(兄弟4人の共同所有)でした。相続した時点で入居者がいたようです。
そして相続したのは良いもののどうして良いのかわからず、賃貸したままずっと放置しており、入居者とも4年以上連絡を取っていないという状況でした。
そして彼女の口からこんな言葉がでました。
「この家は私の目の黒いうちにどうにか処分したかったのですよ」
「所有権移転に関して経費がかかるので、それを補うため20万円にしたけれど、足が出なければ幾らでも良かった」
「4人兄弟なんだけど、誰もいらないっていうんですよ」
「子供たちもみんな要らないって言ってますし」
もうこの戸建は完全に彼女の親族からお荷物扱いされていることが分かります。
たった家賃2万円ですが毎月家賃が入ってくる状況にもかかわらずです。
彼女の親御さんがどのような経緯でこの戸建を購入して、どのように活用しようと考えていたのか、私には知る由もありませんが、このような状況で私に20万円で払い下げになるとは思ってもいなかったのではないでしょうか。
引き渡しの時に出たセリフ
契約してから2週後に引き渡し決済となりました。同じように彼女のご自宅にお伺いして引き渡し決済を滞りなく済ませた訳ですが、ひとしきり作業が完了した時に、彼女がほっとした表情でこう言いました。
「あ~せいせいした!」
4人の共同所有という事で4人全員の同意が必要なのですが、全員が同意し押印された書類を見た時、安く購入できてうれしいはずなのですが、何やら一抹の寂しさを覚えました。
世の中にはこのような物件もあるんだな~と考えさせられる1件でした。
もしあなたが今住んでいる持ち家が将来空き家になりそう、跡を継ぐはずの人がすでに違う地方で働いて生活の基盤を完全に移していると、たとえ戻ってくる気持ちがあっても仕事の都合、子供の学校、配偶者の意見など容易に戻ってくることは出来ません。
何も考えずにそのままにしておくと、やがて自分が介護施設に入るなど、この家を出るような時に持ち家という折角の資産がお荷物となってしまうリスクがある時代になりました。
今からでも、現在の持ち家の価値を把握し、どのように活用するのか、またどのように次世代に遺していくのか、この事をちゃんと考えておくことを強くお勧めしたいと思います(このページを是非お読み下さい)。
今回も最後までお読みいただきましてありがとうございました。